2022.08.02
- ISO
ISO9001の営業的メリット
ISO9001の認証マークを様々な企業・団体のWEBサイトや名刺、あるいはオフィスの受付などでよく目にします。このISO9001認証を取得する意味やメリットは何だと思われますか。
弊社は2007年3月に、初めてISO9001(品質マネジメントシステムに関する国際規格)の認証を受けました。それから現在に至るまで、毎年の維持審査、3年に一度の更新審査を繰り返し15年が経過しました。
当時の弊社の認証取得目的として、品質アップ以上に「営業的メリット」を重視していた面もあったように思います。ただ、調べてみるとISO9001の認証を受けている日本企業の数は、弊社が取得した2007年を境に減少傾向にあるようなのです。なぜでしょうか。
認証を受けたが品質アップなどの効果を感じなかった、あるいは認証を受けていることがもはや普通になり営業ツールとしてはメリットがなくなった、やってみたが自社の業態に合わなかった、というようなことも認証企業減少の要因として考えられます。
本当は必要ないのではないか、決して安くない費用を掛けてまで認証を受ける意味があるのか、特にISO管理担当者を中心に毎年悩んでいたのが実情です。
弊社の半分以上のシェアを占める物流代行事業は、営業部の提案・フローの組み立て、生産部門の詳細手順の組み立て・作業一式を役務サービスとして提供する業態です。形がないものに対する「品質」とは一体どういうことなのでしょうか。製造業を念頭において作られたISO9001を私共の仕事と結び付けることは難しい課題です。また、あえて作らなければいけない記録などの書類が多く、一時期、「審査のために」準備する費用と時間が掛かるだけで、実際には役に立たない厄介な第三者認証規格と弊社内の一部で捉えられていたほどです。
2015年の改訂
ところが2015年、改訂されたJIS Q 9001:2015は形のないサービスを提供する業種にも適用しやすい規格へと変貌を遂げました。
今まで「作らなければいけない」と思い込み、元々の運用を気にせず、無理して作った記録書類などが実は必要ではなかったことに弊社は気付きました。
というより、規格に沿うことが前提になり過ぎて、「なぜそれが必要か」の根本を十分考えないまま運用していたのです。改めて視点を変えて、規格から運用を考えるのではなく、運用から規格に紐づける考え方で見直すようになりました。
すると、以前のように苦しいISO9001ではなく、高い品質で誰でも業務サービスを提供できるようになるために、弊社に足りない考え方が浮き彫りになってきました。無理に作っていた記録書類の中には、多少の手を加えれば本当に必要だったものがあることもわかりました。
この時点で認証を受けてから8年が経過していたわけですから、会社にとっては高い授業料になってしまったかもしれません。
5回目の更新審査を経て
弊社は2022年にも、3年ぶり通算5回目の更新審査を受け、指摘事項(規格に反する事実)もなく無事に更新することができました。
この品質に対する考え方さえ根付いてしまえば、認証を受けていること自体はさほど重要ではないとも言えます。営業的メリットとして役立つことも、もはやないと言っても過言ではないでしょう。
ただ、自社の活動を開示し、審査員の方々と対話することは一種のコンサルティングのようなもので、取引や利害関係のない相手から客観的な意見をいただける非常に貴重な機会です
お客様との関わりというのは、一瞬にしてその関係がゼロになる事もある非常に危ういものです。弊社に直接ご意見をいただけるのはとても幸運なことで、多くの場合、何も語らずに去って行かれてしまうものです。
ISO9001はそのようなお客様の心の声に気付くために、自社の問題、課題をあぶりだし、お客様に高い品質でサービスを提供し続けるためのツールとして、今では弊社に必要なものになっているのです。
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